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Thursday, 12 October 2006

C.M.ウッドハウス 『ゲミストス・プレトン』/George Gemistos Plethon by C. M. Woodhouse

「かつてこの名前の人物が二人いると信じられていた」とギボンの述べている謎めいた人物がいます。
どの宗教にも属さず、真理は現在よりも過去にあるかもしれないと考え、スフラワルティーよりも約三世紀後にではあるけれど、プラトンとゾロアスターの思想の結合を試みた、ゲミストス・プレトンです。
ビザンティンの高名な哲学者であったプレトンは、1439年にフィレンツェでプラトンとアリストテレスの相違について講義を行いました。
この講義を聴くことのできたイタリアのフマニスムの唱道者は、かれの人格、威厳のある物腰と雄弁に感銘を受けたといいます。なかでもプレトンから影響をうけた著名な人物は、コジモ・デ・メディチでした。
プラトン哲学の研究は、当地へのプレトンの到着とともに始まりました。(フィレンツェでは、まだプラトン全集がギリシア語でさえ入手できない状況でした。
哲学者たちに影響を与え、形而上学的思索の土台として、プラトンをアリストテレスの場所に押し上げようとした彼の思惑は、しかし別の結果を生みました。プラトンの思想は詩人や画家の心に深く影響することになったのです。
このプレトンの伝記には、読者の想像を刺激するような挿話があります。
438年、プレトンは使節団の随員として宗教会議に出席する為、ギリシアからフィレンツェに向かう船上にいました。そこで同乗者、ニコラウス・クザーヌスと哲学について会話を交わしたらしいのです。
クザーヌスは、1440年に書き終えた De docta ignorantia、『学識ある無智について』でパトロンにあてた追記に書きました。
「ギリシアから帰還する途中、海上で」ある霊感がかれに訪れた、と。
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C. M. Woodhouse
George Gemiston Plethon  The Last of the Hellenes, Oxford 1986