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Sunday, 27 November 2005

『ダンテの生涯』 ボッカッチョ/Life of Dante by Giovanni Boccaccio(trans. F. G. Nichols)


ボッカッチョの『ダンテの生涯』はフィクションめいている、という批評があります。
アンリ・オヴェットは、そのような非難を与えた批評家たちに反論しました。「実際には、ボッカッチョはダンテに関し、その人物と作品について、非常に有効で正確な多くの資料を収集した」のであり、またそれらの出典も挙げることができた。(『評伝ボッカッチョ』
デ・サンクティスは、『イタリア文学史』で厳しい評を書きました。「かれは、ダンテを敬慕することはできても、理解することはできなかった。ダンテの精神がかれにはなかったからだ。」、「『ダンテの生涯』には、思想の独創性も深さもなく、精緻な論理も無い」。
他にも
ボッカチョの証言は疑わしい、という批判はあります。E.R.クルティウス『ヨーロッパ文学とラテン中世』)
しかしこの短い伝記は、ダンテの優雅な立ち居振る舞いの描写や日常の様子などによって、ボッカッチョの意図したとおり楽しい読み物となっています。例えばこんなエピソードがあります。
ある日ダンテは数人の女性が座っている出入り口の前を通り過ぎる際、ひとりの女性が低い声で話すのを聞きました。「あそこにいく人が見えますか、地獄にいき、望むままにそこから帰ってきて、私たちに下界の人々について知らせてくれた人を」一緒にいる女性がまったく無邪気に答えます。「ええ、それはほんとうに違いないわ」。
「その証拠に、地下の熱と煙で、どんなに彼の髭が縮れたか、肌が黒ずんでしまったかが、見えるでしょう?」
ダンテは背後で交わされるこれらの会話が、善意ある女性たちによるものであると気づきました。そして不愉快には思わず、少し微笑んで立ち去りました。

Life of Dante by Giovanni Boccaccio
trans. F. G. Nichols